愛は愛とて何になる あがた森魚／著　今村守之／著 ミュージシャンの本

学生運動から中津川フォークジャンボリー、「赤色エレジー」のヒットの頃からヴァージンVSの時代もすべてリアルタイムで経てきて、あがた森魚の象徴的なファンタジーに満ちたノスタルジーの世界だけに浸ってきたわけでもないので、逆にそうしたイメージとは離れた、時代や歴史を感じさせるシリアスなインタビュー形式の伝記は本当に面白く読めてしまいます。間に挟まれる鈴木慶一、矢野顕子、久保田真琴、緒川たまきなどの証言も本当に楽しく、あがた森魚が素人に毛の生えた状態でデビューして以来50年もの期間ミュージシャンとして続けて来れた秘密がわかるような気がします。ファンは必携、ファンでなくても音楽シーンに興味のある人は一読の価値ありです。

自伝とのふれこみですがライター聞き書きでした。前半はライターによる時代背景などが冗漫であがたインタビュー発言とのリズムのズレが気になり、後半は逆になんら説明もなく出てくる娘や女性関係などの説明が皆無で、ライター後書きにもあるように「核心には触れられてない」です。しかしあがたの唯一無二の存在には関係者インタビューなどにて伝わるものがあり、特に鈴木慶一、久保田誠の言及は特筆すべきものでした。ファンは必読なのは言うまでもありませんが。