うちの父が運転をやめません （角川文庫　か９４－１） 垣谷美雨／〔著〕 角川文庫の本

作者の人物の設定や物語の展開が絶妙に上手い。田舎から東京に出てきた夫と共働の妻は東京育ち。夫婦の間には何かと難しい年ごろの男子高校生が一人。 ある日三人が久方振りに夫の実家に旅行することになる。そしてそこで彼らが目にしたものは･･････。 種蒔き、意外な展開、回収と、物語の進行が巧みで無理がなく、極く自然に過疎地域の問題や、都会の家族の問題、そして共働き家族の抱える問題、サラリーマン人生に成功したとは言い難い人達を扱いながら、彼らが直面している問題の根本が、物語の進行に伴って次第に明確なメッセージとして読者に伝えられる。即ち読者自身が、ものごとの根本を発見するという、実に巧みな展開に舌を巻く思いです。ややもすれば結論を出すのが難しい社会を、娯楽小説に仕立て上げた作者の技量に改めて乾杯！です。

昨今の老人運転の重大事故が報道される中、考えさせられる小説でした。近い将来の自分の身に置き換えると恐ろしくなってきます。これをきっかけにどうするかを考えたいと思います。作品のエンディングのように自分もなったらいいな、なんて思います。

老人の事故を耳にすることが多い現在、私も老人の仲間入り。近所に住む母の買い物、病院の送迎は私がやってきましたが、自分の将来の事を考えると不安です。他人事と思えず、我が身に置き換えながら読みました。

実家の父の運転を如何にやめさせるかがテーマの作品ですが、単に運転の問題ではなく、高齢者が抱える様々な問題を理解する事が出来て勉強になりました。もちろん、ユーモラスで楽しめる作品です。

夫の墓には入りません、うちの子が結婚しません、など板谷美雨作品がとても面白く、リアルで、毎回楽しみにしています。

世相風刺、綾小路きみまろバリのリアル社会を、面白、おかしく、かつ、役に立って、つい、頷ける共感出来る作品です♪

この集落が結束し暗くない未来が続いていけるよう、主人公とその家族の活躍に期待する、というのが読後の思いです。

この集落が結束し暗くない未来が続いていけるよう、主人公とその家族の活躍に期待する、というのが読後の思いです。