ピアノより大きなピアニスト　年金生活者マリーヤ・ユーディナの運命 武藤洋二／〔著〕 音楽理論、評論の本その他

この本はユーディナの伝記ではなく、演奏評でもなく、彼女が一人の人間としてどんな生き方をしたかが書かれてあります。正直って、読み進めるのがつらくなりました。この世の不幸を一身に背負いながらも、不幸な人（動物も）を見かけると与え尽くす、所持金がなければ借金してまで与えることが日常茶飯事。信仰が彼女を支えていたとはいえ、なぜそこまでできるのでしょうか。本書の中にその答えは書かれていませんでしたので、読み手が自ら考えたいです。 ユーディナは自分の不幸を嘆くこともせず、絶望をも感じていなかった。むしろ、他者に与え尽くすことで幸せを感じていたかのようです。ユーディナのような生き方は誰もができる訳ではないです。また、誰もが、このような生き方を目指すものでもないでしょう。生き方に正解はないし、どのように生きてもいいと思います。そもそも、幸や不幸は人が勝手に決めた価値基準かもしれませんね。そういう意味では、あとさきのことを考えずに、常に「今を生きた」のがユーディナだったのかも知れません。 「スターリン本人を手紙で批判し」たエピソード。ユーディナはスターリンよりも、いえ、宇宙よりも大きかったかも知れないです。