SENNHEISER HD 820 ヘッドホン本体

2018年8月に発売開始された本製品ですが、Orpheusを除けばゼンハイザーのヘッドホンとしては最高額（同年11月現在）となることもあり、宿命的に同社の開放型フラグシップHD800Sと比べてどうなのか？ が問われることになります。国内外のネットレビューでの大方の見解は、音質、特に音場表現の点でHD800Sに及ぶものではなく、あくまで密閉型という足枷をはめられたHD800Sの下位互換であるということ。あえて異議を申し上げます。HD800Sに比べた音質上の優位点が確かに存在します。それは音の実体感および箱庭的な音場表現。そして、そこから帰結的に導かれる「音の把握しやすさ」です。HD800Sの広さと開放感は裏を返せば「散漫な音」とも言えるのですが、一方のHD820は音の一切を取りこぼしません。究極のモニターサウンドです。あくまでピュアオーディオの延長としてはたしかにHD800Sの出音が正しい。しかし密閉型でしかできない表現をゼンハイザーなりに取り入れた答えが本製品なのでしょう。製品を受け入れるオーナー側の感性と解釈によるのです。現時点で世界最高峰の密閉型ヘッドホンの一つであることは確かです。