開封すると意外に大きく、重いという印象を受ける。さて肝心の音出し・・・小型ブックシェルフという定義を超えて、6畳ていどの部屋ならば低域不足もなく豊穣に鳴る。スピーカーの側面にカーブをつけているので、前面に放出された音の一部は素直に後方へ流れているもようで、旧素材のコーン紙を使いながらも「音切れ」は良い。ワーフェデールは英国製スピーカーとしては老舗だが、他社タンノイ、KEF、B&Wなどの著名メーカーに比べて知名度は低い。そのためオーディオマニアのなかでも所有者は僅少だろう、このたび新型のダイヤモンド12.0に続いて２台めの搬入。両者ともに試作データだけでなく、音楽の要点を知る製作者が耳で聴き、音決めしていることは間違いない。これまで所有していた価格が倍ほどのタンノイ・レボルーションXTは放出することにした。オーディオマニアではなく、メーカーブランドにこだわらない音楽愛好者に勧めたい。

音質：非常に良い

注文した翌日に届きました。外箱わずかに凹み、むろん中身は無傷です。このアタマふた桁12シリーズは、独ALRジョーダンからカールハインツ・フィンク氏を招き、新開発のコーン紙を使用。そのためか音質は、ALRジョーダンのメタルコーンと同質の素早い反応が特徴です。と同時に相反する音切れ能力が分解能を高めています。このシリーズでは最も小型なので、やや低域不足の傾向があり、アンプ側のトーンコントロールで補正するか、またはサブーウーハーを弱めに併用すると、六畳ていどの部屋ならば申し分のない音質が実現できます。低域補正を好まぬむきには、ひとつ上の12.1が良いでしょう。

イルフォードの標準印画紙 1M(Glossy) と比較すると最大濃度がやや低く、また地色の白も「純白」ではないので、全体のレンジが狭い印象を与える。そのため 1M に近いコントラストを得るには、フィルターを 0.5~1.0 ていどコントラストの高い番号を使う。さらにネガによってはガラスキャリアから素通しキャリアに変更して、コントラストをかせぐ必要がある。もともと軟調の性質を持つ印画紙なので、以上のような補正対策をしても 1M と同等には仕上がらない。おおまかに云って風景写真より人物写真むき。

同封された使用説明によると、現像温度24℃ 90~120秒と記載がある。そのなかで、24℃は夏場での使用にも適すというメーカー側の自画自賛ふうの記述にはナットクがいかない。夏場は常温にちかいが、冬場に24℃を維持するのは困難だ。ただし、上記の条件を守れば満足できるプリントが出来上がるのも事実。現像開始30秒あたりでは画像進行が遅く、この時点では焼き不足かと思えるが、90秒ちかくになると急に濃度が増し、表記どおり120秒あたりの現像時間が望ましい。

1M(glossy) はマルチグレード印画紙のなかでは標準だろう。一般にマルチグレード印画紙は、使用する引き伸ばし機やフィルターの差異があるかも知れないが、2号から1号⇒0号と移行するにつれ、極端に軟調傾向となり最大濃度の「黒色」が出ないのは欠点だ。それに反して3.5号以上の硬調フィルターでは最大濃度の「ベタ黒」となり、フィルターの使用が広範囲の場合は黒色の調子が揃わない。この欠点の観点から、イルフォード社はもっとも使い易い標準だ。