若者よ、マルクスを読もう 最終巻/内田樹/石川康宏
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「若者よ、マルクスを読もう」(略称若マ…
2023/12/4
「若者よ、マルクスを読もう」(略称若マル)シリーズ最終巻のテーマは「資本論」。最後も興味深い視点が提供されている。本シリーズは「まだマルクスを読んだことがない高校生」を対象にしているのだが、この点では内田氏の「中国語版への序文」が傑作。最終回の読み所は、ずばり内田氏の展開する二つの論点。①『資本論』が労働者の生身の姿を描き出した数多の著作の引用によって成立する告発の書であること。②有名な「わが亡きあとに大洪水よ来たれ!」の引用が意味するものについての解説。資本主義における人口減少についての理解が一気に進む解釈と思う。
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女性ホームレスとして生きる――貧困と排除の社会学 電子書籍版 / 著:丸山里美
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ホームレスの調査・研究に、これまでまっ…
2021/6/11
ホームレスの調査・研究に、これまでまったく登場しなかった女性の存在に焦点をあてた労作。フィールドワークや生活史調査などを通じて、その実態に迫りつつ、本書で重要なのは「なぜホームレス研究で女性視点が抜けてしまったのか」という問い。そこには歴史的背景とジェンダーの問題が横たわっている。もう一点。主体性とは何かについての指摘は考えさせられた。「ホームレスとなることを、本人が選んだのか」の検討は非常に深く思い問題。最近、朝日新聞「交論」でテーマになった風俗ワーカーの問題にもつながるのではないか。多くを学べる著作。
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沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち 電子書籍版 / 藤井誠二
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必読
2022/1/29
文庫化にあたり新たに一章が追補された。これにより当時の米国民政府の政策的意図がより鮮明になっている。初読の際もかなり衝撃を受けたが、再読した今回も新鮮にまた読み飛ばしていた事実など改めて認識することができたことは収穫だった。著者の粘り強い取材と揺るがないヤマト人としての視点に、大いに学びたい。本書で明らかにされる事実は、沖縄県民でも知らない人が多数であろう。いわんやヤマト人は、である。歴史の中で決して忘却してはいけない事実を記録することの意味をかみしめたい。次に渡沖した際には真栄原地域はぜひ歩いてみたい。
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ドキュメント〈アメリカ世(ゆー)〉の沖縄/宮城修
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米占領下の沖縄に関する類書は少なくない…
2022/12/26
米占領下の沖縄に関する類書は少なくない。しかし本書の狙いとする「分かりやすさ」を実現するため手法は、かなり成功しているのではないか、と感じる。占領からの27年間の史実(実際に起きたこと)を軸にしつつ、日米琉行政担当者らの証言と、象徴ともいえる3人の政治家の言動を巧みにからめることで、立体的な理解を可能とする。時代のダイナミックさを、沖縄の人々の怒りや熱情は、私たちへの訴求力を高めている。ただし、本書を読み解くカギは想像力だろう。歴史を学び、今を理解するためにも私たちには想像力が必要であることを示している。
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ナツコ 沖縄密貿易の女王/奥野修司
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読んでいる数日間、夏子さんに引きずられ…
2021/6/11
読んでいる数日間、夏子さんに引きずられるように、東シナ海や沖縄の各島を旅したような気持ちでいた。表には出てこない歴史の中で、生きることに燃え上がるような情熱を放った一人の女性がいたことに、ただただ驚く。そしてそれを見事に「発掘」した著者にも敬意を。いくつか深めたい点はあるが、新たな発見だったのは糸満の人々の特徴、そして瀬長亀次郎との接点である。さらに大きく言えば、かなり古い時代から大海原を自在に(もちろん危険は付きまとうが)駆け抜けていたであろう、琉球という地域で生きる人たちの生き方に大変な興味を持った。
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海を抱いて月に眠る/深沢潮
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巻末の解説(斎藤美奈子さん)によれば、…
2021/8/17
巻末の解説(斎藤美奈子さん)によれば、「在日文学」というジャンルがあるという。作家の名前には見覚えがあるが読んだことはない。本作は在日文学でも在日二世文学とも言えるのではないか。一世である父と二世の子の視点とを交互に織り交ぜながら、大きな物語としての戦後の日韓関係を描く。そこには小さな物語としての無数の在日韓国人たちの生きた姿が底流に太く流れる。おそらく作者の実体験にも裏打ちされたこの表現に、社会と歴史の断片ではあるが、輝く断片を見出すことができる。著者の作品は初めて読んだが、他の作品も大いに期待したい。
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沖縄県知事 その人生と思想/野添文彬
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政府の人に読んでほしい
2022/12/26
これまであるようでなかった、施政権返還後の歴代県知事を年代順に紹介する評伝。この視点の獲得により、沖縄と日本との複雑な関係性を考える解像度が一気に上がる。保守・革新では分けられない、沖縄県知事の重責と果たしてきた役割は実に興味深い。印象に残るのは、自民党政府の変化が小泉政権から始まり、安倍政権で決定的になること。翁長・菅会談での菅の暴言は有名だが、ここを解きほぐさない限り、現政権による問題解決はあり得ない。この本は自民党政府とその支持者こそ熟読すべきであろう。保守とは何か、安保とは何かを今こそ再考すべき。
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ザ・ブルーハーツ ドブネズミの伝説/陣野俊史
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10年前の自分ならば、手に取ることさえ…
2020/12/27
10年前の自分ならば、手に取ることさえしなかったと思う。ブルーハーツの歌詞を解釈することは、青春時代の頭の中をかき回されるようなことだった。しかし今の自分には受け止められたし、読んで良かったという気持ちでいる。心の動揺はあったし、一気に読み通してしまい、しっかり理解していないこともあるだろうが、それでもとても良い文章に出会えたと思える。ヒロトとマーシーの作風を、マーシー=物語派、ヒロト=感覚派という分類を(とりあえず)していることには共感。そういう分類を敢えてすることこそ、物を書く人たちの宿命なのだから。
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新編鴉の死/金石範
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衝撃
2023/3/18
衝撃の文学であり記録でもある。「済州島4.3事件」を題材として描かれているのは、人間とは何かという大きなテーマでもある。4つの短編それぞれに異なったテーマをもたせつつ、共通人物と思われる人間も登場。著者の中では連作的要素もあるのだろう(一人の作家の描く小説はすべて連作という考え方もできる)。金鐘時さんとは違い、著者に直接の事件の目撃経験、体験はない。であるからこそなのか、想像力あるいはインスピレーションの発揮の仕方がすごいのだ。読む人を選んでしまう作風ともいえる。しかし関心のある方は躊躇なく挑んでほしい。
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沖縄について私たちが知っておきたいこと 電子書籍版 / 高橋哲哉
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初歩的な「沖縄」入門書として読まれるこ…
2024/6/16
初歩的な「沖縄」入門書として読まれることを想定した内容。その目的は達せられていると思う。ただし、巻末の「対話-沖縄へのコロニアリズムについて」における知念ウシ氏と著者との対談は、初心者にはかなり厳しい内容である。いわゆるナイチャーの私も常に考えさせられているのが、沖縄と自分との在り方を植民地主義的にとらえるとどうなるのか、という点だ。知念ウシ氏はこの点で目取真俊と並ぶ「過激派」であり、主張をそのまま肯定できないが、言われていることは核心を突いている。最後にいきなり重たいものを手渡されたような読後感である。
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