「不思議の杜のホスピタル」 この本の登場人物には外国人の名前が当てられている。 主人公のドットーレ、学生のパスカル、作業療法士のオットーやピーターなど、イタリア、フランス、イギリス風など、国境を越えた万国の人々が一つの物語のなかに並んでいる。 何よりも筆者がどんなイメージのホスピタルを実現したいのかがよく伝わって来る。 架空と現実の入り混じった、実験的とも思われる、精神科総合病院。 院長であるドットーレの周りには優秀な若い人が集まり、彼が構築しようとしている理想のホスピタル像を理解しようともがきながら、それぞれの役割を持つスタッフが協働して一つのユートピアを創り出そうと頑張って(楽しんで)いる姿が描かれている。 これまでは監獄か地獄の如きイメージの精神病棟が、オシャレなカフェやギャラリーのある多目的ホールのように思える。 まるで壮大な人間精神の博覧会を覗いたような気分だ。 ホスピタルの最上階ホールで毎月開かれるさまざまなイベントは、スタッフと患者と一般市民の交流の場所になっている。 街の図書館にも置いてもらえるようリクエストしたいと思う一冊である。