コロナ禍の只中にあって読むと、感染症の変異の怖さも浮き彫りになる空恐ろしい力作。 舞台の上海は過去に数度訪れた街ゆえ、それなりの実感も湧き興味深く読了。これをさかのぼって行くとカズオ・イシグロ「わたしが孤児だったころ」の”魔都”上海に行きつくのだけれど…… 最終章の後日談まで読み進み、これってノンフィクションだったの⁈と勘ぐり、オーラスの三行でそうじゃない事に気付くという顛末。小説家とは、見てきたような壮大な嘘をつく職種だ！

地球が産まれてから現在までと、これからの未来予測を、生物という観点から俯瞰した本書は、限りなく興味深い読み物だった。 人類は万物の霊長などと奢り高ぶっているが、この星でのサバイバルにおいては、知性は最善のアイテムではないのだろう。 地球的な規模で考察すれば、人類や生物など、ほんの僅かな期間、表皮に寄生したカビくらいの存在かも。

紛れもない大傑作！ 物語のメインストリームは腐海より深く、珠玉のサブエピソードは余りにも印象深い。