本当に長いシリーズでした。第一期開始の1988年から本伝最終話が1997年。外伝が翌98年から2000年… 本伝だけなら連続で２年あまりで済むものが、作画の品質保持のため発売延期や、ヤン役の富山敬さんの早世(既にヤン暗殺エピソードの後ですが…)で当時は完結を心配する人も少なくありませんでした。それを完成させた多くのスタッフの尽力には感謝しかありません。 あと個人的に気になるのは最終話で話が出た元幼帝エルウィン・ヨーゼフ2世のその後ですが…これは原作者の田中さんが最後を敢えて書くのを避けたのでは…とは思います。おそらく自分で生き方を決められないようにされてきた人物を悪役とするのは躊躇われ、かといってヨーゼフ２世が成人するまで話を続けて「やはり為政者として賢明な人物ではなかった」などと頁を付け足す必要性を感じなかったという所でしょうか…それよりは、ヤン亡き後のイゼルローン軍の奮闘は、あの伝説の終わり方としても価値があったと言えそうです。 今のノイエ版から入られた方も、ぜひ本作品にも触れて濃いテーマ性を感じ取って頂きたいです。

タイトル通り。このずんずんという方は他にも文章タイプの『英語の話せない私が外資系金融企業に入るまで』というような体験記を出していて、その中でも本書は全編本人のコミック形式なので一番読みやすいです。 読み進めていくと、この人は一流大学卒でない身から丸の内で働く事を夢見て外資系企業の面接を受けて奇跡的に採用された後、シンガポールのIT企業で勤務するなど、元の学歴からは想像できない程にキャリアを積んでいます。英語が話せないならマスターできるまで英会話教室を当りまくってますし、地頭だけでなく段違いのハングリー精神みたいなものがあるのだろうと思います。しかも当人は発達障害の兆候もあるらしく、それで苦しんだ経験も田中圭一氏のルポコミック『ウツぬけ』で紹介されています。こちらも一読の価値あるかと思います。 彼女は今も東洋経済社やダイヤモンド社のビジネスサイトなどで過去の経験に捕らわれないビジネスコーチングをされているそうなので、誰もがマネできるかはともかく、こういうキャリアアップ法もあるぐらいの予備知識にはなるかと思います。

以前、大友克洋氏が描いていた『ショートピース』を読んだ事あったので、それのアニメ化かな…と思っていたのですが多少は違っていました。四編の短編集のうち大友氏の原作は二作目と四作目で、あとは別の作家さんによるものです。 元々は原作も読んだ『武器よさらば』がお目当てで入手したのですが、最初にあった『九十九』が一番観ていて小気味よい面白さはありましたね。あれは「付喪神」なんだな…とすぐ解りましたし、昔ばなしにも通じるものがあります。 後から知ったのですが、この四編はどれも日本が舞台になっていたんですね。本作公開が2013年で、二年前にあった東日本大震災から大友氏が「何があっても自分は日本から離れて生きることはない」という思いから作られた作品集だったとか… 『武器よさらば』はどこかしら今のウクライナ情勢すら連想してしまう近未来の戦争…そういえば、このショートピースという題名も言い換えたら「束の間の平和」とも読めてしまう…人の知能は度し難さもありますが、あまり目先の技巧や増長心で、この平和を台無しにはしたくないものです…

最近の社会的な問題や事件に対し、日本国内の人権意識と国際機関などのズレがあるのでないかと思い、現在の世界的人権規約である国連の世界人権宣言を学ぼうと思い購入。 この本は高校生や大学生などにもわかりやすい文章で70ページのコンパクトにまとめた解説書で初めて国際人権というものを学ぶのにも適しています。 日本は法や世間一般の道徳・因習といったものを重んじる人は多いですが、その割には国際的な法規や人権感覚に熟知する人は以外と多くないと感じる事が増えています。 特に入管法違反では日本国民や社会的に実質的な危害を加えていなくても、難民申請をしている最中の人までが入管法違反のために複数年も入管施設で拘束・病死・自殺といった状況に追い込まれており、これが国連人権委員会では毎年、人権規約違反として批判されています。 日本は法治国家を自称するなら、その法的規範や人権感覚というものを今一度でも更新すべき所があるのでないか…本書はその理解を進める一助としても活用できると思います。

実はこれを買うのは二度目です。 つい最近、4K画質のultra-HD Blu-ray版を買い、前に持っていた本品はまんだらけに…(苦笑) しかし通常のブルーレイデッキでultra-HD版が再生できない程の無知な私は己の浅はかさを知るのです… いっそ4K対応の再生機だけでも買おうかとおもいましたが、ならばテレビも4K用の物を買わねば画質は堪能できぬ…色々考えて一世代前に還る判断に至りました。 それでもこの画質はデジタルリマスター化もされてますし、1979年のセル画アニメとしては非常にいい造りです。同時期の劇場版『銀河鉄道999』よりリマスターも多くなされているためデジタル媒体への移行もノウハウ遺産が多く受け継れているのではと思われます。 将来的に4K画質のフルハイビジョン規格は一般化するでしょうが、あまりに高すぎるハードルでなく無理なく良好な画質で名作を観たい方に幅広くお勧めしたい一品です。

これを読む一年以上前からツイッターやユーチューブで寺田さんのコミックは見かけていて、どれも強く印象に残る物語ばかりでした。酷い虐めに遭いながらも苦しんでいる人へ迷わず手を差しのべる人。一時の迷いから人の道を踏み外し不慮の死に遭いながらも、三途の川の目前で他者の為により恵まれた来世を惜しげもなく差し出す人…ここにはそういう寓話にあふれたコミックにしてはなかなか見られない物語で溢れています。 作者の寺田浩晃さんは近年に大病を患い、最悪いつ生命の危険に遭うかもわからない身になりながら、このような物語を編み出されています。ツイッターの近況では体調次第でコミック執筆すら自由にしづらい中で、それはまるで存命中に一つでも人の記憶に残ろうとするメッセージを書き残そうとしているかのように… 一人でも多くの人にこの物語に触れて頂きたいと願う限りです。