充電式コードレス掃除機というものが一体何時ごろからこの国において波及し一般化されていったのか、家電製品の歴史を殊更意識的に追従するほど暇のある身分ではなかったとしても、このダイソン掃除機がその歴史にとって大きな役割を果たしてきた、事によってはその歴史を牽引した最大の功労者であったかもしれぬという程度の想像が可能なほど絶大な影響力を誇っていたであろうことは理解しているつもりである。さて、以前所有していた規格より幾分かは上位互換の買い替えと相なりその使用感を確認してみたところ、以前の規格と比べて特段何かが改善された印象もなく、連続使用時間が延びたという事実も、そもそも15分も使えばぱっと見の美観にさして不満も持たぬ程度の美意識しか持ち合わせない者に60分の使用など永遠に到達することのないオーディオアンプの音量摘み右半分と同様に「あそび」の領域に過ぎない。では何か不満があるかと言えば全くもって大満足の至りであり、要は技術革新には「この程度」という満足領域が著しく存在し、人類史を刷新せしめるかのようなイノベーションの到来など半世紀に一度程度で勘弁願いたいという心持ちにさえさせられる。

プリンとはそもそも英語の「pudding」に由来する日本語であり、英語の「pudding」は、「腸」や「ソーセージ」を意味するラテン語「boutullus」に由来する説と、古英語で「puduc（いぼ）」「pudoc（いぼ状のもの）」に由来する説がある。現代の英語「pudding」にも「血合いソーセージ」の意味があるため、ラテン語「boutullus」の説は有力とされる。 ただし、「血合いソーセージ」が「プリン」を意味するようになった由来については、材料を混ぜ合わせ小麦粉の皮に包んで蒸したりすることが、ソーセージの腸詰めを連想させるためといわれているが、正確なことは何も分かっていない。古英語の「puduc」「pudoc」が「プリン」の語源とする説も、「いぼ」から「プリン」になった経緯が明らかではないが、ドイツ語で「ソーセージ」を意味する「puddek」という語があるため、ラテン語「boutullus」と同様にソーセージの腸詰めの連想からであろう。 そのような名称の歴史を持つプリンが極東の島国で進化を遂げているとは、イギリスの船乗りたちに想像できたであろうか。

このアルバムに収録されている「ピンク・シャドウ」は。90年代のレアグルーヴ全盛時のクラブで結構かかっていてそれをきっかけに知ったのだが、当時からなんてタイトな演奏なんだろうと思っていた。ライブ盤とはいえ、当時のJ-popと呼ばれ始めた界隈では滅多に耳にすることのない、スリリングで生々しい音像。それ以来このアルバムはCDでは持っていたが（レコードは高くてあまり手を出す気になれず）、今回のリイシューで遂にレコードも入手した。改めて聞いて感じるのは、70年代あたりのミュージシャンと、今のミュージシャンの「演奏の巧さ」に対する捉え方がまるで違うのではないか、ということだ。色々理由はあるだろうが、結局音楽の原風景となるような、何を聞いて育ったかが全く違うのだろう。映画などと同じで、例えばヒッチコックやムルナウやフォードや溝口を見て映画に目覚めるのと、その人たちが撮った作品を見て映画に進んだ人たちの違いに似ている。時代性を超越する普遍的本質というものがあるのかもしれない。 だからと言って「古典」に回帰すればよい、という単純な話でもないのだが。

世にシャンプーと呼ばれるものほど、その性能や機能において正当性を認めることが困難な商品もあるまいと無自覚ながらも感じている人々は多いのではあるまいか、と言うのもドラッグストアで精々400円前後で売買される店頭陳列商品においても、いわゆるヘアサロン（とは/しかし何か）で使用されているようなプロ仕様の高額商品においても、その使用感において謳われる飾り文句はあたかも欧米のモデルクラスの髪質（そもそもモデルの髪質が上質かどうかを保証するエヴィデンスがあるわけでもなかろうが）が約束されたかのような説明において大きな差があるわけではなく、ならば決め手は値段なのかと言えばそこにも明確な論評が見当たるわけでもなく、慎ましやかな庶民にとって選択肢が多いことを喜べと言われている向きも無きにしも非ず、無知なままお付き合いしておくのが最良の手段かもしれぬと自分に言い聞かせ、購入を継続するに留まるのであった。

電子黒板やオンライン授業も一般化されつつある昨今、さて黒板とチョークという、日本においては明治初頭より米国より持ち込まれた「black board」から始まる歴史において、それが公教育という場の前面に常に自明の存在として屹立し、実に１世紀半が経過しようとしている。それは取りも直さず、１５０年もの時間の経過において、この極東の島国における公教育が常に「教える⇒教わる」という一方向的な講義形式の形態に固執してきた証左とも言える。しかし悠久とも思えたこの形態は、まさに転換期と終焉を向かえつつあるのかもしれず、双方向的な教育環境の整備とともに消えゆく運命なのかもしれぬと、郷愁の伴うあられもない感情に身を寄せ、しかしまだ慣れ親しんだこの形態に寄り添う時間は続くのかもしれぬ、レビュウとは公教育の善し悪しを語る言論空間ではなく、今はただ軽くて使いやすい、という事実を述べるに留める。

おーい、と特に誰が存在する訳でもない空間に呼びかけてみるなどという装いを見せたところで、盆に乗った茶が給仕されるなどあるはずもないということは重々承知している上で、敢えて不在の場に向かい呼びかけているかのようなこの商品は、おーいお茶（とは、誰に？）といかにも昭和然とした商品名を令和日本においても一向に変更しようというそぶりもなく、にも関わらずジェンダー的な観点やら核家族化の自明化やら、そもそもおーいお茶と呼びかける存在すら危ぶまれる社会であることなど歯牙にもかけず太々しく問題など何もないかのように自らの揺るぎない位置に収まっているかのような、令和日本における荒唐無稽な存在として（またそのような存在として気付かれることすらなく）定着していることに、ある種この国の嫌悪を抜きにした自己同一性を感じると言っては言葉の遊戯が過ぎるであろうか。

前回も同様の店舗で買ったわけだが非常に満足感が高かったこともあり、今回はそれより「厚み」があるとの触れ込みに惹かれ購入に至ったところ、やはり肉質への満足感は高いながら、幾ら切り込みを些細に渡り入れてみたところで、噛み切るには労を要したことを告白せねばなるまい。肉にせよ魚にせよ適正と思しき「厚み」はなるほど確かに存在するかもしれず、だがそれは記載者自身が初老とも呼べる年齢に差し掛かり、「厚み」に立ち向かうべき顎力を失いつつあることにも由来してるかもしれず、しかれば尚一層その事実と向き合うために購入に踏み切るという倒錯した行動を取ってみることを推奨はしないが愚策とも断言できず、少なくとも一概に肉の硬質度に文句をつけて済む問題とも思えず、敢えて五つ星を付けることで己の良心的な欺瞞に応えてみるそぶりだけ見せておくに留まる。

生来のせっかちな性格が災いし、対して調べもせず見た目だけで「ローテーブル」という言葉を信用し購入に至った以前のテーブルは、置いた瞬間から茶の間のテレビ画面の下三分の一が視界から消えるという、もはや気分をローにするという意味だったのではないかと訝しむほどに自身の思慮浅さを反省する日々を過ごし、しかし反省しても三分の一が五分の一となるはずもなく、主に民放の人を小馬鹿にしたテロップが上手い具合に見えないくらいの利点のみがあるだけで、洋画の字幕か見えなくとも困らないほど外国語に秀でてるわけもなく、急遽買い替えることと相成った。果たして今度はまるで何事もなかったかのように、初めからそこに存在していたかのように我が家の狭い茶の間に厳然と存在を示すテーブルのお陰で自身の無駄な出費などどこ吹く風といった趣きである。

ある経緯を経て長年の友人を拙宅に迎えることとなり、客人用の布団一式がすっかり常備されているものと思っていたところ、草臥れたマットレスを処分していたことをすっかり失念しており、しかしその時まず考えたことは果たしてマットレスは絶対的に必要なものなのか、無ければ無いで別にやり過ごせるものであり、そもそも数十年前まで遡ればこのような物がなくとも日本人は畳の上に敷布団のみで平気で寝ていたではないか、という心持ちであった。そこで試しに直板の上に敷布団を設置し臥せてみたところ、物の数分で背中に鈍痛が走り、否応も無く畳の偉大さを痛感させられることと相成り、即購入を決めることとなった。客人を数日迎える程度のものとしては良き買い物であったということだけ報告しておく。

アーモンドが日本に流入したのは先の大戦後、1950年代のことであると言われており、かの旧約聖書においても度々言及が為されている長い歴史を持つこの食物が、この国においては高々70年程度の新参とも呼びうる存在に過ぎないにも関わらず、あたかもそこに存在することが自明であるかのような装いを見せていることは、「効果」などというある種の本質を示す単語をその名に付される令和日本における佇まいからも明々白々であり、ならばその「効果」とは何ぞと問われたとしても一向に答えるそぶりも見せず居直ってさえいるかのように屹立する様はもはや、何かを発することすら醜悪な態度であると無言の圧力を掛けられているとすら思え、個人的にはこれを徹底的に無視しておくつもりでいる。