古い歴史はあるものの最近は赤字に喘(ｱｴ)ぐ美術誌出版会社。そこにM&Aを持ち込んで来る会社。そしてその 美術史出版会社のメインバンクである東京中央銀行大阪西支店や、同行大阪営業本部を舞台に、物語が語られて いきます。 M&Aを拒む出版会社に、資金面の締め付けにより売却を迫る半沢直樹の上司たち。それらに抗い、果たして半沢は、出版社を救うことができるのか。種蒔きとして紹介されていたアルルカンの絵は、物語の進行にどの様に 関わってくるのか。文章の達人でもある作者の種まき･展開･収斂(ｼｭｳﾚﾝ)･回収で魅せる手腕は見事です。 そして半沢直樹の決定打「倍返し」は今回も健在。その痛快な大逆転があればこそ、私たち読者も救われるのです。とある読者の感想、" 今回の内容も、人情と正義という諸刃の剣の中から、何が正しく何が間違っているのかを 考えさせられるものでした。常についてまわる救済にも、また心打たれるものがありました。正義は勝つ、そんな 単純な物語ではない紆余曲折を経て、多くの人の心を動かす池井戸潤さんの、本に毎回魅了されています。" は、 この本を手にした全ての人の感想でしょう。

さて本作は、東京慈恵会医科大学医学部卒業後、父親が開業する西東京市の医院で診療活動をしながら執筆活動を 続けている作者の最新作です。 患者に寄り添うことを身上とするナースエイドの澪と、天才的外科医とが衝突しながらも夫々の理想を求めて行く 物語展開か、と読み進んでみれば、読者はいつしか怒涛のように迫り来るミステリーの世界へ誘い込まれてしまい ます。息を吐かぬ展開。物語の渦中に読者を引き込む作者の手腕は今回も見事です。 新人のナースエイドとして看護師の補助をしつつ、患者に寄り添い彼らの心を癒すことに腐心する澪。しかし、姉 の死の真相を突き止めようと活動し出した澪の行動が一変。後半は彼女の生死を賭けた凄い展開に。そして、外科 技術の練磨のみを追い求める天才外科医師との関係は。夫々が大きなトラウマを抱える二人。その成長と揺るがぬ 信念に感動も一入(ﾋﾄｼｵ)です。 文字通りノンストップ医療サスペンス。これは面白い！皆さんに是非お薦めしたい快著。どうぞお愉しみください。

本作は、東京慈恵会医科大学医学部卒業後、父親が開業する西東京市の医院で診療活動 をしながら執筆活動を続けている作者の最新作です。 患者に寄り添うことを身上とするナースエイドの澪と、天才的外科医とが衝突しながら 夫々の理想を求めて行く物語展開かと読み進んでみれば、いつしか読者は、疾風怒涛の ミステリーへ誘い込まれてしまいます。息を吐かせぬ展開。物語の渦中に読者を惹込む 作者の手腕は今回も見事です。 新人のナースエイドとして看護師の補助をしつつ、患者に寄り添い彼らの心を癒すこと に腐心する澪。がしかし、姉の死の真相を突き止めようと活動し出した澪の行動は一変。 後半は彼女の生死を賭けた凄い展開に･･････。そして外科技術の練磨のみを追い求める、 天才外科医師との関係は。 夫々が大きなトラウマを抱える二人。その成長と揺るがぬ信念に感動も一入(ﾋﾄｼｵ)です。 文字通りノンストップ医療サスペンス。これは面白い！皆さんに是非お薦めしたい快著。 どうぞお愉しみください。

原田マハ、渾身のアートミステリーの傑作です。この謎多き画家の死の真相に迫るべく、まるで130年前の現場に臨場し、 その一部始終を具(ﾂﾌﾞｻ)に見届けるかの如き圧倒的筆力で、読者の興味を一気に鷲掴み。凄いの一言です。 ゴッホとゴーギャン。" 狂おしい程に絵画を愛し、もがき苦しむ生き様を見事に描いた" 不世出の画家二人。その絶大な 評価は、生前には決して与えられませんでした。 ゴッホは、拳銃自殺を図ったということが既に定説になっています。がしかし、それは真実なのか。作者は、その死の 謎を追跡しながらゴッホとゴーギャン、その二人の画家の生涯を再構築します。リボルバーによって、"Revolve" される 二人の生涯。　 極めて残念ですが、これから読む方のために、もうこの辺りまでしかご紹介できません。ぜひ手に取って、原田マハの 限りないゴッホ愛に触れてみてください。強くお薦めしたい傑作です。

美人画の喜多川歌麿、浮世絵の偉才葛飾北斎、戯作者の山東京伝、そして謎多き東洲斎 写楽など、数々の才ある人を発掘して世に送り出した、不世出の名プロデユーサー蔦屋 重三郎こと蔦重が、江戸幕府の執拗な締め付けに抗いながら、独自の工夫と信念で創り 上げた独特の世界。 著者の類稀なる筆力は、読み手の脳内に蔦重の活躍した時代を再現してみせ、彼の反骨 心や様々な葛藤にも鋭く踏み込み、蔦重のクリエイターとしての生き様を活写していき ます。実に見事な出来栄えです。 江戸の粋な風が吹く中に自分も居て、蔦重と共にこの物語を愉しんでいる。そんな錯覚 に誘い込むほど巧みな作者の筆力に圧倒されます。485頁と文庫本にしては大著な作品 もサクサク読み進めるのは、それ故でしょう。 未だお読みでなければ、是非この傑作を味わっていただきたい。至福の読書時間を満喫 されること請け合いです。

作者の人物の設定や物語の展開が絶妙に上手い。田舎から東京に出てきた夫と共働の妻は東京育ち。夫婦の間には何かと難しい年ごろの男子高校生が一人。 ある日三人が久方振りに夫の実家に旅行することになる。そしてそこで彼らが目にしたものは･･････。 種蒔き、意外な展開、回収と、物語の進行が巧みで無理がなく、極く自然に過疎地域の問題や、都会の家族の問題、そして共働き家族の抱える問題、サラリーマン人生に成功したとは言い難い人達を扱いながら、彼らが直面している問題の根本が、物語の進行に伴って次第に明確なメッセージとして読者に伝えられる。即ち読者自身が、ものごとの根本を発見するという、実に巧みな展開に舌を巻く思いです。ややもすれば結論を出すのが難しい社会を、娯楽小説に仕立て上げた作者の技量に改めて乾杯！です。

長い時を経てもなお人気の衰えないベストセラー･エッセイです。 天下の難関藝大に入学し、日々真摯に研鑽を積み重ねる青春の日々を描いた感動と共感の青春物語。などでは全くなく！ 丸で漫画の様なドタバタ青春物語。 後にNHK交響楽団の常任指揮者となり、ベルリン･フィルハーモニー管弦楽団やウィーンフィルハーモニー管弦楽団等々、 世界の名立たるオーケストラを率いた日本の名指揮者からはとても想像できない、文字通り破天荒な若き日々が描かれた 超絶面白い自伝的物語。こんなに魅力的な青春期が文章化できた背景には、岩城宏之氏の器の大きさ、即ち人間を讃歌し 得る心の豊かさと寛(ﾋﾛ)さがある故(ﾕｴ)と思います。

生きる目標を何も持たず、日々流されて生きてきた主人公。しかし本人も気づかぬ内に、 老人介護施設での音楽活動を通じ、他人の生きるチカラになっていく。 人を大切にする思いが、己も知らぬ間に、音楽を通じて他人の生きるチカラを喚起する。 そしてそれが己の生きる力にもなっていく。 胸を熱くさせる物語。こんなに感動的な内容であるにも拘らず、淡々としたその筆運び がまたさらっとして軽やか。流石です。 ずっとぼんくら呼ばわりしていた水木おばあちゃんは、そういう主人公のことをずっと よく見ていて、余りにも感動的な手紙をぼんくらに遺しました。ことここに至って私の 涙腺も決壊。感動を共有できる素晴らしい作品です。

現政権を支持する方も不支持である方も、右寄りであろうが左寄りであろうが関係ない、 本来あるべき我が国の憲法について、一緒によく考えようではありませんか。 中国による尖閣諸島の領海侵犯が日常的に行われている現状。そしてコロナ禍や大規模 災害でこんなに悲惨な状況が生じている近年。にも拘らず、我が国にはこれに対処する 緊急事態法がないという悲しい現実。真に憂慮すべきこの嘆かわしい事態を、我々一人 ひとりがわが身のことと真剣に捉え、さらに将来この日本を背負う子供たちのためにも、 今一度考え直すべき時ではないでしょうか。そこから目を離すことはもう許されないと 強く思うのは私だけではない筈だからです。

知らない誰かの言葉が、知らない他の誰かを励ましたり、その人の人生を変えることもある「水曜日の手紙」は、不思議な手紙。 パン屋が夢だった主婦、絵本作家になることが夢のサラリーマン、妻を震災で失い進路決定を迫られる娘と 二人で暮らす父親。「水曜日の手紙」を通じてそれらの夫婦や父娘が、各々の将来の夢や希望の進路を掴み 取り、将来を切り開いていく物語。 知らない誰かの言葉が知らない誰かを励ましたり、その誰かの人生を変えることもある。大人のファンタジーです。 兎角(ﾄｶｸ)時に息苦しく、日々の生活に埋没し自分を見失い勝ちの人生に、新たな一歩を 踏み出す勇気と潤いを与えてくれる人生再生の物語。